サイコバニーの哲学
大きなウサギの耳をつけたスカル&ボーンズ。
古くは17世紀のイギリス非国教徒や海賊、
19世紀アメリカの秘密結社のシンボルも彷彿させ、
どこか愛らしさも感じるこのユニークなアイコンが
「サイコバニー」のアイデンティティを象徴する。
自由を追い求める冒険心を持ちながら
家族や仲間を大切にする愛情深さもある。
伝統に裏付けられたデザインと
現代のライフスタイルにマッチする機能性。
そして何より素材やディティールへのこだわりは
もとネクタイメーカーだったデザイナーの
徹底した審美眼が貫かれている。
デザイナーのロバート・ゴドレーはイギリスに生まれ、
イタリアでファッションにめざめ、
そしてアメリカで起業したコスモポリタン。
大自然の中でのスポーツを楽しみ、
都会やストリートから生まれるアートにも感動する。
多彩なインスピレーションから生まれるデザインと生き方。
「サイコバニー」は人生を謳歌する男たちのために
新たなジェントルマンスタイルを提案する。
Robert Godley / ロバート・ゴドレー
1971年7月7日生まれ。イギリスのケント州ウィスタブル生まれ、ロンドン育ち。
18歳からネクタイ生地の老舗David Evans and Company(デヴィッド・エヴァンス・アンド・カンパニー)で勤務し、
その後Drakes of London(ドレークス・オブ・ロンドン)でも活躍。
2004年にポロ・ラルフローレンのネクタイ部門ディレクターとしてニューヨークに移住し、2005年にビジネスパートナーの
ロバート・ゴールドマンとともに「サイコバニー」を立ち上げる。
ファッション業界へのきっかけ
実はファッションデザイナーになりたい、と思ったことは一度もないんだ。
若い頃はスキーインストラクターのほかにも運送会社で働いたり、地元のコカコーラ工場で働いたりしながら自分の将来について考えを巡らせる日々だった。
ある日、イギリスでは200年の伝統があるDavid Evans and Company(デヴィッド・エヴァンス・アンド・カンパニー)という
ネクタイ用のシルクプリント生地を作っている会社から面接に来ないか?
という電話がかかってきた。自分は生地のこともプリントのことも何の知識もないし、大丈夫かなあと思いながら面接に行ったところ受かってしまって。
でも、工場は自分の生まれ故郷であるケント州にあったので、まずはそこで働いてみることにしたんだ。
工場ではプリントの技術をひとつひとつ習得していった。そして2ヶ月後にはもう車に自社のプリント生地を詰め込んで、
パリやチューリッヒ、イタリアのコモなどへ赴き、世界のトップファッションメーカーやブランド、デザイナーたちと商談していた。
生地のサンプルがぎっしり詰まった重いケースを抱えて世界中を飛び回る営業の仕事は本当にハードだったね。
でも仕事に打ち込むにつれ、デザインや色のセンス、そしてメンズファッションについて少しずつ学ぶことができた。
イタリアのクライアントが多かったので20代前半は年間の3分の1をイタリアで過ごし、語学も流暢になった。
そしてイタリア流のクオリティオブライフや着こなしの審美眼が磨かれていったように思う。
ニューヨークに移住し、「サイコバニー」を立ち上げ
NYにやってきたのは2004年にラルフローレンのネックウェアのデザインディレクターのポジションを得たのがきっかけなんだ。
でもいざ入社してみたら、自分のヴィジョンを実現するには会社が大きすぎる、と感じはじめた。
それで一旦退職して、再びネクタイ用の生地を売る仕事に戻り、自分の進むべき道について模索する日々を過ごした。
そんな悶々とした日々の合間にも少しずつ自分自身のコレクションを作り始めていたんだ。
それで、ある日、現在のビジネスパートナーであるロバート・ゴールドマンに自分のコレクションを見せるチャンスが巡ってきた。
ゴールドマンはアメリカで3代続くネクタイ会社の御曹司。
彼のセカンドホームともいえるニューヨークアスレチッククラブ(アメリカでも名門のプライベート社交クラブ)で彼に会ったんだ。
彼は僕のヴィジョンに共感してくれて、間もなく一緒にブランドを立ち上げることになった。
その後、すぐバーニーズニューヨークにコレクションも入荷が決まったんだ。2005年、僕は34歳のときのことだよ。
デザインのインスピレーション
スポーツとポップアート、そして家族。それらは一見、関連性が薄そうだけれど、僕にとってはどれも大切なインスピレーション源なんだ。
スキーやサイクリング、ウィンド&カイトサーフィン、パドルボード、ボクシング、フィッシング(釣り)や
アーチェリーなど、今もさまざまなスポーツをやっていて、これまでいろいろなレースにも出場しています。
スポーツで最も素晴らしいのは大自然の中で自分自身のマインドが解き放たれるとき。雪山をハイキングしていて朝日が昇る瞬間に遭遇したり、
サーフィンで海風にふかれながら色とりどりのカイトやセールが青空にきらめくのを見たり。
そしてアンディ・ウォーホルやバンクシーなど現代のポップアートにも多くの影響を受けてきました。
バンクシーは僕が長い間住んでいたイーストロンドン出身でもあり、彼の斬新なアプローチやパンク的な精神に共感し、まだ無名時代に作品を買ったこともあります。
ウォーホルはNYでポップアートシーンを牽引してきた人ですが、彼の色使いや人間のありのままを写し取ったポートレート作品にはいつも感銘をうけているよ。
そして家族、特に一人息子はかけがえのない存在。
自らが父親としてお手本であるべきという自覚を促すのはもちろん、彼がひとつひとつ新しいことに挑戦し、
ひとりの人間として成長していくのを見守ること自体が大きなインスピレーションだね。
ついこの間、補助輪なしで自転車に乗れるようになったので、一緒にツーリングを楽しむことでまた新たな発見もたくさんあるよ。
「サイコバニー」のトレードマーク
海賊とウサギという正反対の要素を持ったシンボル。人生においては自分自身の内面に正直であると同時に、
アドベンチャーによって自分が何者かを探し求める、そんな陰と陽のようなバランス感覚が大切だと思ってデザインしたんだ。
海賊はアドベンチャー精神や自由の象徴。目標に向かってはリスクを恐れず、
船上ではキャプテンを筆頭にメンバーの個性も大切にしながら民主的な統率がとれているのも特長なんだ。
一方で昔からラッキーシンボルとしても親しまれてきたウサギは常に群れで生息する社会的な動物。大きな耳で常に周りに気を払いながら、
意外な方向へジグザグの力強いジャンプをして敵を撹乱する。
子供のころ、祖母がテディベアのかわりにウサギのぬいぐるみを僕に買ってくれたのもいい思い出だね。
今ではそのウサギを息子が持っていて、毎日ベッドで一緒に寝ているんだよ。
「サイコバニー」ブランドのコンセプトは?
ネクタイというアイテムは男性にとってはジェントルマンスタイルを完成させていくためにはなくてはならない大切なもの。
ネクタイから発祥したブランドとしての誇りは、何より生地とディテールへのこだわりに表れている。一般的なテーラーは
顧客の方の上に生地を乗せて鏡越しにドレーピングをしていくけれど、僕らはどのステップでも実際に手で触りながらものづくりをしているのが
大きな違いなんだ。
僕の生まれ故郷であるイギリス伝統のテーラリングに、イタリアで学んだスタイリッシュな着こなし、
そしてニューヨーク流のクールなアメリカンカジュアル。それらをミックスしたのが「サイコバニー」としての提案。
メンズのトラディショナルなデザインにモダンな機能性、反逆的精神を加味しているのも大きな特徴だよ。
NYという街
とてもユニークですばらしい街だとは思う。でもときにはここは24時間ずっとメンテナンスが必要な機械みたいなところだ、とも感じるね。
どんな環境で生きていくにしても、自分らしくいるためにはバランスをとりながらサバイブしていかなくちゃならない。
僕にとっての次のアドベンチャーとしてはまるで「サイコバニー」のウサギがジグザグのステップで
意外な方向へジャンプしていくみたいに、街からは離れてロングアイランドの海の近くに住むことだね。
会社からは通勤が遠くはなるけれど、その変化はきっとまた何かよい成果に結びついていくと思うよ。
人生のモットー
数年前、ビジネスパートナーのゴールドマンからスティーブ・マックイーンの
額装されたポートレートをもらったんだ。そこに書かれた言葉「自分が信じる道があるなら、地獄で戦ってでも手に入れろ」
がモットーだね。いつも僕の机の前に張ってあって、自分のビジネスの大きなインスピレーションになっているよ。